おすすめ第16弾!
『スコットランドヤード・ゲーム』(野島伸司)

日常に潜む無意識の圧力。

これほど始末の悪いものはない。
だれにも知られずに、しかし、確実に蝕んでいく。

繰り返す毎日の中では考えもしない。
まさか自分が誰かを苦しめているなんて。

何気ない言葉やさりげない行動は残らない記憶。
自分では気付かず、相手にだけ蓄積されていく。

「こうあるべきだ」
世間が、慣習が、前例が、そう囁いてくる。
でもそれは、形のない空気のようなもので。
一つ深呼吸して、自分に問いかけてみてほしい。
そんな亡霊に囚われてはいないだろうか、と。

昔のことに縛られている気がする。
過去にとらわれず、前に進みたい。
そんな人にぜひ本書をおすすめしたい。

人は自分で思っているほど、強くない。
だからなのか、外の世界に救いを求めてしまう。
その行為は運転中にハンドルを手放すのと同じ。

心の隙間を侵してくる先入観や固定観念。
この荒波に抗うのは並大抵のことではない。

常にだれかと比べ、常になにかと比べ、
神経だけが擦り減っていく日々。
相手の言葉に怯え、そこだけにフォーカスしていると、
きっと本当に大切なもの見失ってしまう。
砂時計の砂が下へ下へ落ちていくように。
大事なものも一つずつ、下へ下へ。

「他の人は・・・」
「周りはみんな・・・」
「ずっとこうだったから・・・」

そんなことで気に病まないでほしい。
他人と比べることほど無駄なことはない。
何にも得るものなんてない、生産性ゼロの行為だ。

「自分が本当にしたいことは何?」

自分自身に問いかける時間とそれに答える余裕を持とう。
そして、そこに向かって一歩踏み出すを勇気を持とう。

世の中に正解なんてありゃしない。

あるのはきっと、筆跡だけ。
丸付けはだれかにしてもらうんじゃない。
自分自身でするんだよ。

答えを外の世界に求めるのはもうよそう。

人はみんな過去を美化しがちだ。
確かめようなんてないのだから。
いつだって過去には勝てやしない。

過去の堆積が現在であるはずなのに、
現在を見れないのはなぜだろう。

うまく笑えなくなったのは、いつからだろう・・・

恋愛ものなんだけど、それだけじゃない。
むしろ、それ以外の要素の方が心に響いた。

そこがこの本の特筆すべき点だ。

きっとセリフが多いからなのだろう。
テンポがよく、読みやすい。

登場人物もそんなに多くなくて、特徴がはっきりしていて頭に入りやすかった。

それに言葉のチョイスもおもしろい。
「アンズタルトの物語」なんて語感が最高に良い。

自分の気持ちを確かめるための一冊に。

あなたが過去と向き合い、今に集中するための手助けになりますように・・・

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは今日はこの辺で。